経営者を何人も見てきた。ほとんど全員に共通する要素は「苦労人」だったことである。

 幼少期や青春期に経済的に逼迫する環境で育ったり差別で苦労してきたりした人が、優れた(利益を上げる会社の)経営者になっている。

 『毎日新聞』で連載して人気を集めた林真理子さんの小説「下流の宴」では、最後のほうに「奮起力」という単語が出てくる。この「奮起力」は劣悪な環境でこそ養われるのかもしれない。

 植物を育てる際に水を一時的に断つことで植物の根が水を求めて地中に広がり、これが植物の生命力を高めるという主旨の話を聞いたことがある。同じ理屈だ。

 だからこそ、何不自由なく育った2世3世経営者が会社をつぶすのも道理である。

 子育ての重要点の1つが子供に「奮起力」を自然に持たせることだとすると、劣悪な環境を意図的に子供に経験させたほうがよさそうだ。