福島支局時代の思い出の1つは、汚職事件で抜かれまくったことだ。「お食事券」と聞いて「汚職事件」という文字が浮かぶくらいヘトヘトになった。

 ある日、県警キャップの野島さんと私は椎名デスクに呼び出された。昼飯どき、パセオ通りのこぎれいな店の2階だったと思う。

 他社に抜かれ続けている私たちに対して椎名デスクは情熱を込めて爆発的なハッパをかけてくれた。そばに雷が落ちたような大迫力で、私たちへっぽこ県警担当は震え上がった。すさまじいお説教が続く。

 目の前に昼飯が運ばれているのだが、食べることができる状況ではない。

 大目玉のあと椎名デスクは昼飯を指して相変わらず厳しい声でこう言うのだ。

「ほら。食べろ!」

 食べろと言われても、叱責で胸がつかえて食べられない(涙と笑い)。

 近年の上司は部下に嫌われたくないとかで叱らないと聞く。そんなことでは組織の力が落ちてゆくのに。愛情のある叱責は部下の力を伸ばす。愛情がなくて単に恐ろしい叱責であっても、部下は叱られたくないから頑張ってその結果力が伸びる。

 私たちはいい上司に恵まれた。