警察庁出身の参院議員・小野次郎さんの危機(組織)管理は全く同感である。5月9日付『朝日新聞』(東京本社版)15面掲載のそれである。小泉首相の秘書官を務めた経験や、恐らく警察庁時代の経験も踏まえたものだろう。

<危機対応では、幕僚が気がかりな点を躊躇なくトップの耳に入れられる雰囲気が重要。「うるさい。おれが決める」と言う首相では都合の悪い話ほど上がらなくなる。その点小泉首相は「小野さんは私の耳だ」>などと言ったそうな。

<「不都合な真実」も進言できる風通しの良い環境になっているか。失敗の経験に学べるか>という指摘も誠に的を射ている。

 私の古巣である毎日新聞社では、「不都合な真実」を勇気をふるって進言した某地域の幹部社員を当時の経営トップが疎んじた実例がある。のちに数千万円の損失を出してその事業から手を引いたことを考えると、幹部社員のせっかくの進言を怒りとともに拒絶したトップの責任はあまりにも重いのだが、責任を取った形跡はない。

 こういう話はパスカルが『パンセ』で1600年代にすでに言及している。『100分de名著 パスカル パンセ』(鹿島茂・NHK出版)で、断章100をこう引用している。

<たとえば、ある王侯がヨーロッパ中の笑い者になっていようと、当の王侯は笑い者にされていることをまったく知らないというようなことがしばしば起こる。真実を伝えるのは、伝えられた人にとっては有益のはずだが、たいていは伝える人にとって不利に働くようだ。真実ゆえに憎まれることになるからだ。ところで、王侯の近くで暮らしている人々は、仕えている主君の利益よりも自分の利益のほうが大切だと思っている。したがって、彼らは損してまで主君に得をさせようなどとは夢にも思わない>

 私が知る限り、けっこう良心的な組織でも社員が忖度してしまってトップに話が行かない事例がある。トップが「いい話はどうでもいい。悪い話こそ全部教えろ。そうでないと首だ」と繰り返し言い続けることができれば、組織の風通しはよくなっていくだろう。