元博報堂制作部長の高橋宣行さんの『キーメッセージのつくり方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は企業広報の観点から言葉を編み出す過程を詳述した。言葉づくりを仕事の1つにしている私には勉強になった。

 しかし、私には「そこが知りたい」部分が残る。

 例えばウォルト・ディズニーの創業理念「ファミリーエンターテインメント」はほかの遊園地にも共通する言葉だ。ホンダの基本理念「3つの喜び」もどの企業にも共通する言葉である。資生堂のコーポレートメッセージ「一瞬も一生も美しく」とてほかの企業に共通する言葉ではないか。「For beautifuk human life」という言葉はカネボウでも資生堂でもBMWでも花王でも使える。

 普遍性の高い言葉は、ほかの企業で使っても違和感がない。言葉を抽象化や純化させると、発信者とのつながりが見えなくなる。

 この企業だからこの言葉しかない、という強い結びつきがほしいと思う私は無茶なことを考えているのだろうか。

 だったらお前が考えてみろと突っ込まれそうだが、私に名案があるわけではない。ただ、「カッコいい言葉を並べても結局あんたの商売でしょ」と言われたら腰砕けになる言葉は説得力を欠く。とりわけこれからの消費者の主流を占めるミレニアム世代には響かないのではないか。

 毎日新聞社が1991年に制定した企業理念の基本理念はこうだ。

 毎日新聞社は、人間ひとりひとりの尊厳とふれあいを重んじます。生命をはぐくむ地球を大切にします。生き生きした活動を通じて時代の創造に貢献します。

 制定を担当した先輩は当時「地球という言葉を入れた」と自画自賛していたが、私には今もピンと来ない。「で?」とツッコミを入れたくなる。ことほどさように言葉で独自性を100パーセント出すのは難しい。言葉の限界かもしれない。