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 福島・葛尾村には1989(平成元)年9月に取材に行った。当時の松本村長(何と今も村長をやっておられる)らに取材して「交通死亡事故9000日」の背景を『毎日新聞』福島版で記事にした。

 長崎や沖縄の離島ではこれを上回る町村がある。しかし同村は最後に発生した死亡事故の日を把握しているので、起算日の明確なゼロ記録としては日本一なのであった。

 記事にこう書いてある。

<松本村長は「村の人はみんな顔見知り。狭い道路ではお互いに道を譲り合うし、道路をすれ違うときは車のスピードを落としてあいさつする。これがゼロ日数を延ばしているんです」と胸を張る>

 いい村でしょ。

 取材の日、高い青空が頭上に広がり、何とも気持ちがよかった。のどかで、静かで、穏やかな空気の中で私はこころを解放した。取材で訪ねたのはこの時だけだが、あまりにも気持ちがよくて、そのことと高い青空は忘れられない。 

 それだけに東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示などで受けた葛尾村の様子は気になっていて、しかし関東で暮らす私が何をできるわけでもないので黙って見守るしかなく、今回ようやく避難指示がほぼ解除されたという報道を見て、あらためてあの日を思い出した。

 何も手助けできなくて、本当に申し訳ない。