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 絶版になった本でも古本で安価に手に入れることができるのでありがたい。今の私は土門拳に熱中しており、人物描写に興味があるので『風貌』をアマゾンで買った。

 長谷川如是閑や和辻哲郎、宮本百合子などの顔を「へー」と言いながらしげしげとながめる。そうかこんな顔なのか。

 写真が見事なのは私ごときが言うまでもない。最も印象に残ったのは志賀潔博士である。同じ写真が『新版 土門拳の伝えたかった日本』(毎日新聞社)に掲載されているけれど、撮影状況の文章は載っていない。本書には撮影したときの模様を記した土門拳の文章が載っており、それがまた読ませる。志賀博士の文章もそうなのだ。

 メガネのツルを自分で補修しなければならないくらいに困窮している志賀博士の表情を土門拳は大きく写した。人間は1つしかない顔にこれだけたくさんの感情を表出できるのか。見ていると苦しくなってくる。

 迫った土門拳はさすがだが、全てを見せた志賀博士の顔にそのお人柄が重なって見えた。