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 ここ数年毎月広島に通っている私が土門拳の作品の中で最も見たかったのが『ヒロシマ』である。絶版になって久しいけれど、アマゾンで古本が容易に手に入る。

 私がまだまだ知らない広島がそこにあった。いや、広島の人には常識なのかも知れない。被ばくした生存者の皮膚や顔や足や目がただれ、歪み、割れ、見慣れていない私は思わず顔をしかめてしまう。

 漫画や映画、活字では描ききれないこの現実は、何と表現すればいいのか。本を閉じ、椅子にもたれかかり、天井を仰ぎ見る。

 この古本を譲ってくれた京都府在住の人は、「原爆の記録総集編」という特集を組んだ『アサヒグラフ』1982(昭和57)年8月10日号を一緒に送ってくれた。こちらもまた何と言うか、ああ、そうだ、表現を放棄しよう。中途半端な表現をするくらいなら黙っているほうがいい。

 どう締めくくっていいのか分からない。いま思いついたことを書いておく。この写真集を私は自分の子供たちに見せよう。3人のうち2人は独立して離れたところに暮らしているのでなかなか見せる機会がないけれど、その機会ができたら必ず見せる。それくらいしかできない。すさまじい破壊兵器と被害の前に私はどうにもこうにも無力なのである。