教え子の女生徒が恋しいという相談者に対して<好きになった女生徒と出来てしまえば、それでよいのです。そうすると、はじめて人間の生とは何かということが見え、この世の本当の姿が見えるのです>という回答が有名な車谷長吉さんの『人生の救い』(朝日文庫)は、人生の救いのなさを示す。

 行動に対して踏み込みが足りない人には何を言っても無駄だと諦観しているようだ。厳しい。車谷さんが積んだ経験の凄惨さが背景にあるのだろう。甘えるなよ、と。

 だからか、毒をもって毒を制す回答が多い。しかし仏教に依って立ち、<この世は阿呆になることが一番楽な道です>や<世の中の困っている方々がほんの少しでも救われるようなことをすれば、それで自分も、ほんの少しですが、救われたような気持ちになれることもあります>と繰り返すところにお人柄が垣間見える。