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 フランスで100万人が見たという。今の日本なら1万人いくかどうか。やりきれなさしか残らないので、小説『セメント樽の手紙』の映画版と私は位置づけておく。

 音楽が流れる場面は1回、主人公が配偶者とダンスを習っているスタジオでかかっている音楽がそのまま流れるだけ。あとは徹底的に淡々と、徹底的に地味である。まるでそばに立って見ているような錯覚を覚えるのは、ドキュメンタリーしか撮ったことがない人が撮影監督だからだろう。それだけ現実感に包まれる。

 幸か不幸かこの映画、私は分かる。よく分かる。東大大学院教授の藤原帰一さんが『毎日新聞』の映画評でこの映画を高く評価していたが、藤原さんは頭でしか理解できていないのではないか。だとしたら不幸である。いやしあわせか。