NHK教育の「旅するフランス語」と「旅するイタリア語」、「旅するドイツ語」、「旅するスペイン語」が面白い。常盤貴子らを主人公に現地ロケをするというぜいたくなつくりである。仕事を兼ねて外国旅行ができると考えた知恵者がNHKにいるのだろう。

 30代前半で私が『週刊金曜日』を辞めてすぐに西欧を30日ほどフラフラと回ったとき、隔靴掻痒の感がつきまとった。

 ほとんど毎日鉄道で移動し、着いた街を適当に歩き回っていた。街の景色はどれも西洋風(←当たり前)で目新しい。初めての場所は脳を刺激する。物珍しさで「ほー」とか「へー」とか思いながら散策した。

 しかし、私にできるのは街を見ることだけなのだ。その街に住む人と話す語学力が全くないから、話しかけることができない。家の中を見せてもらったり「あなたの人生聞かせてよ」とせがんだりしたくてもできない。せっかく西欧に来て、日本人と全く顔つきが違う人間があちらこちらにいるというのに、目の前でコーヒーを飲んでいるというのに、生の声に深く触れることができない。

 田舎の食堂に入ればメニューを適当に指さす程度だ。食べたいものを正確に伝えることさえできなかった。いや、そもそもメニューの文字が全く読めない。店の人に聞いても英語でやり取りできない。「これは何だろう」と思いながら食べた回数が多かった。

 30日も西欧を回ったのに意思疎通がそこそこできた国は英国だけである。ポルトガルもスペインもイタリアもドイツもオランダもフランスも、物足りなさが増えるばかり。

 こんな隔靴掻痒の思いを潜在的に引きずってきたようだ。「旅する外国語」シリーズがやけに私を癒やしてくれるので、引きずってきたことに気づいた。

 この番組が教えてくれたことがある。今度行くときはそれを実行する。すなわち現地の通訳を雇うのである。せっかくだから、うら若き美女がいいな。でもって熱烈な恋に陥るのでアル。そうなったらワタシは現地で沈没するぞ。