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「何でも聞いてね」と言われて振り返るとそこに鷲尾倫夫さんがいた。あの『FOCUS』カメラマンを20年務めた報道カメラマンである。東京・半蔵門で開催中の写真展でお目にかかることができた。

 お言葉に甘えてカメラマンになったきっかけから人物写真の撮り方、今撮っているテーマ、最近の写真賞について思うことなどなどをお聞きした。ぶしつけな質問に対しても明快に答えてくださった。花鳥風月の写真に1ミリもこころが動かない私は不感症かと思ったが、そうではないようだ。今の時代「写真が伝わる写真」がないのである。

 腹の据わった人である。腹が据わっていないとプロになることはできないのだ。腹が据わっているから奥までずんずん入ってゆく。

 鷲尾さんは沖縄をテーマに現地で撮影している。あるとき23時ごろに思いついてチビチリガマにタクシーで行き、6時間も漆黒の闇の中で過ごしたという。私も1988(昭和63)年ごろだったかチビチリガマに入ったことはあるけれど、金城実さんの彫刻展示公開日の昼間に10人くらいと入ったのであって、深夜に一人で入ると想像するだけで怖すぎて気絶してしまいそうだ。ハブに襲われる危険も高い。でも、鷲尾さんは沖縄に近づくためにそんなことでもやってしまう。机上の論理派は到底勝てまい。

 そんな鷲尾さんの話に魅力がないわけがない。長い時間お話をうかがうことができた。ラッキーである。

 今回ももちろん目録を買った。その2ページ目に記された鷲尾さんの文章がまたいい。

<孤立無援状態で思考する時間は長かったが、費やした時間は何かを持って返って来る。外に向かって挑むのではなく、自分に向かって挑むのが筋と理解出来た>

 深い写真を撮るカメラマンは言葉も深い。