
憧れのモカロールをお代わりして計2切れも食べてしまった。その辺のモカロールではない。谷崎潤一郎が愛したモカロールである。
濃厚な味とねっとり感から、バターを惜しみなく使っていることがうかがえる。東京・銀座ウエストのバターケーキ並みで、私の口に合う。谷崎先生もこれを召し上がったのかと思いながらゆっくり味わうつもりだったが、うまいのであっという間に食べてしまった。

ここは熱海のケーキ屋モンブラン。ロバート・キャパも来たという。店内には谷崎の写真とキャパがここで撮った写真が飾られていて、私には二重の聖地である。
モカロールを1本丸ごと買って帰ろうかなと思ったものの、私一人で食べると血糖値に大打撃を与えるのは間違いないので、お代わりで我慢することにしたのであった。

この店には何とも愛らしい女性がいて、彼女によると特に金土日はモカロールが品切れになるという。私のような谷崎ファンが来ているようだ。金土日に行くなら早い時間帯を狙うべきだろう。

私が住む平塚からは東京より熱海がはるかに近い。毎週食べに熱海通いをしてもいいくらいだ。
谷崎が通ったスコット別館や三島由紀夫も絶賛したハンバーガーのボンネット、谷崎が食べたお菓子「ネコの舌」の三木製菓も徒歩数分の範囲にそろっているので、谷崎巡礼が数分で済む。
なお、温泉には入らない。湯船で30秒以上じっとしていられない私には温泉は拷問でしかない。