橋本治さんが『ちくま』10月号に寄せた<「危機意識」はないのか?!>を読んで、私はすぐに小池都知事の「アウフヘーベン」発言を思い出した。当時私は2つ思った。その1は「日本語使えよ」。その2は「えーっと意味何だっけ? 悔しいけど思い出せんがな」。

 自分の無知を恥じるどころか「ウケルゥ!」と笑いながら、シンバルを叩いて躍り出す猿のオモチャのような人が増えていることを橋本さんは憂えておられた。

 アウフヘーベン、高校時代か大学の一般教養かで聞いたことがある。しかしもともと不勉強なので、たぶん試験が済んだ途端に頭から抜けた。アウフヘーベンを知らなくても死ぬことはないし、哲学者と話す機会でもない限りボロは出ないのである。アウフヘーベンを知らないばかりに恥をかいたこともたぶんない。と思ってしまう私は無知を恥じない猿のオモチャと一緒だな。

 自分を猿のオモチャと認めつつ、鼻白む。わざわざアウフヘーベンという言葉を使った小池都知事の小ざかしさに。