
石川真生さんに初めて会ったのは沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会事務局(那覇市久茂地)だったから1988(昭和63)年ごろだろう。その後、『週刊金曜日』編集者になった私は真生さんに沖縄の写真をどんどん発表してもらった。
虚飾の対局に位置する考え方と生き方をしている飾り気のない人なので、虚飾や欺瞞を軽く見破る。持って生まれた魂でもあるだろうし、ファインダーを通していろいろな人を見て寄り添ってきたから“視力”が鍛えられた面もあるだろう。そんな真生さんが被写体として選んだのは虚飾や欺瞞から遠く離れて生きる人たちだ。
日の丸の旗を使って自由に演技をさせるシリーズが一段落し、次に取り組んだのがこれである。すなわち、琉球時代から現在までの沖縄の歴史のひとこまを地元沖縄の人たちが演じる「大琉球写真絵巻」である。
さっそく丸木美術館に見に行った。欺瞞を引っぺがして皮肉をよく効かせた創造写真もあれば、米軍基地とさまざまな関わりをしてきた人たちをそのまま登場させた写真もある。琉球王国時代の歴史を私はほとんど知らないので、その時代の創造写真は歴史の断片の習得になった。
丸木美術館には「原爆の図」のほか「水俣の図」もあり、あらためて石牟礼道子さんを追悼した。
大琉球写真絵巻は今のところ全4部。1〜2部の前半(2月21日まで)と3〜4部の後半(3月4日)に分かれる。というわけで、後半もう1回行く。この琉球写真絵巻は見たかったから。
NHKで特集されるなど真生さんも全国区になった。ステージ4のがんを抱えているけれど、これからだよ魔王の真生さん。