これも愛、あれも愛、たぶん愛、きっと愛♪ 確か松坂慶子の「愛の水中花」である。

 広島から新幹線に乗って帰ってきた。小田原駅で下車して、ホームを降りて、改札に向かうところであれ? 何かないぞ。何がないんだろ? ん? 手提げがないやんけ。あれ? 何で? は? もしかして?

 新幹線ホームのベンチで荷物の入れ替えをしたので、置き忘れたか? スーツケースを抱えて階段を駆け上がり、ベンチに走る。ない。

 そもそも新幹線から持って降りたか? うーん。記憶がない。げげげ。席に置いてきた?

 アワアワしながら改札にいる駅員さんに走り寄る。「あの、手提げがなくて。ベンチにないので、もしかして新幹線に置き忘れたかも」と訴えながら、手提げの中にiPadと財布、数冊の文庫本、朝日カルチャーセンターの資料が入っていることを思い出してさらにアワアワ。貧乏なので財布の中に現金は1円も入っていないが運転免許証や保険証は入っている。

 駅員さんが新幹線の車掌と電話で話してくれたり、小田原駅の各方面に問い合わせてくれた結果、別の駅員さんがベンチに置かれた私の荷物を回収してくれていたことが判明した。どれだけ感謝しても足りないくらい感謝したのは言うまでもない。

 ここ1年くらい、例えば喫茶店でコーヒーを飲んで席を立つときや何かの会場から去るときなど、必ず後ろを振り返って忘れ物をしていないか確認するクセをつけてきた、つもりだった。それがこの失態。油断した。

 ベンチで荷物の入れ替えをした際に手提げを置き忘れたことに気づかないとは。こういう失敗をする自分が信じられなくなる。足下の大地が割れる感じ。

 これも老いあれも老いたぶん老いきっと老い♪と歌うしかないか。