私は無知の塊なので「知らなかった」と驚くのに疲れるほど驚いてきた。これは何億回目の驚きだろう。単位は億ではなく兆かもしれない。

 <福島市内の弁天山は安寿と厨子王一行の旅のはじまりの場所で、そこには線量計が据え付けられていました>という一文を『図書』(岩波書店)5月号掲載の姜信子さん「<ひとり出ていく ララ あすの旅>――越境、あるいはいわゆるアナキズム」に見つけてひっくり返りそうになったのである。

 弁天山、聞いたことあるけどどこだっけ。iPadで調べてみると渡利にある小さな山ではないか。あの辺りに警察の古い官舎があって、福島署を担当していたころ何度も通ったが、山には興味がなかった。まさかそんな山だったとは。福島の人には常識なのだろうか。

 安寿と厨子王の舞台と知っていたら県版に何か書いただろうに、当時はそんなこと全く知らなかったのがクヤシイ。いま福島支局勤務になれば、もっともっとネタを掘り起こすことができただろうになぁ。

 けっこう楽しく充実した3年半だったとは思うが、あとからあとから福島のことを知るにつけ、福島の深さにシビれ、福島でやり残したことの多さに天を仰ぐのである。