駅ビルを歩いていたら5メートルくらい先でお年寄りがよろけて後ずさりした。ちょうど看板が置いてあり、その土台の鉄板にかかとを引っかけたように見えた。踏ん張りがきかず、尻餅をつき(尾てい骨から落ち)、そこで止まらず後頭部を床に打ち付け、ゴンという音が響いた。

 ありゃりゃ。慌てて駆け寄る。90歳くらいに見えるおばあさんだ。

 意識はある。

「気分悪くないですか?」という問いかけに「悪くない」と返ってきた。

「救急車呼びましょうか」

「いえ呼ばないで。どこに連れて行かれるか分からないから」

 ドラッグストアの湘南薬品の人も駆けつけてきた。

 おばあさんは起き上がることができない。腰の辺りに手を添えて痛そうにしている。

「念のために行きましょう。救急車なら最優先で見てもらえますし」

 私の頭にはフェイスブックへの島村先生らの書き込みが浮かんでいた。見知らぬ人のお節介で父親が助かった。救急車を我慢して母親が亡くなった。そんな書き込みを思い出したのである。ダンコとして救急車を呼ばなければ。

「自分の母親なら救急車を呼んでほしいと私なら思う」という点で湘南薬品の人と意見が一致し、あとは任せることにした。

 それにしても、だ。人は老いて足腰が弱くなるとあんなふうによろけるのである。ひとごとではない。ランニングをしている今は3時間くらいノンストップで走り続ける自信があるけれど、必ずやってくる老い。厳しい現実を見せてもらった。おばあちゃんありがとう。