村西監督の本である。高く評価することもできるし、批判することもできる。どっちにしようかな。

 まず批判的な視点で。

 私の周囲に「応酬話法」が得意(と本人は全く気付いていない)な女性がいる。銀座のママさんから「あなた向いてる。まず受付からやらない?」と誘われた実績の持ち主だ。彼女の反応の柔軟さを見て私は「要するに脊髄反射だな」と気づいた。

 私が知る限りだが、知性と教養あふれる人に「脊髄反射」はいない。私の言葉を受け止めて、こっちの脳みその程度を測って、どんな言葉を使ってどう表現すればこちらに正確に伝わるかを考えている。そんな人に応酬話法を使ってもあっさり見破られる。お里が知れるのは大変恥ずかしいことであるな。

 応酬話法など使わずに済む仕事と生活を送るほうが心身にいいだろう。

 次は好意的な視点で。

 本書を読めば応酬話法を身につけることができると思ったら大間違いだ。運動神経と同じように持って生まれた能力だから、後学で伸ばすことができるとは思えない。従って、持って生まれた人は幸せ者である。

 本書が提示するのは応酬話法の仕方ではない。もっと大きな、例えば危機の切り抜け方であり、生き方の基本と言っていいだろう。

 人を説得したい場面は意外に多い。例えば親に「あれ買ってー」とねだる。好きな人に「つき合って」と口説く。就職活動で面接官に自分を採用してもらえるよう対応する。仕事で企画を出す。その前に本書を読んでおくと、ずいぶん好転するのではないか。

 そういえばオウムの「ああ言えば上裕」も瞬間的な反射ができる人だった。彼に応酬話法の本を書かせることができる編集者はいないものか。