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 新聞各紙の別刷りの最終面によく全面広告を出していたのがケフィアだった。当時はメープルシロップだったかヨーグルトだったか。元校長という上品そうな女性の顔写真入りだった。元校長が始めた事業に見えたから、「校長先生経験者なら悪いことはしないだろう。変なものは売らないだろう」と信用した人が多いのではないか。

 しかし、10年ほど前に元社員から私が聞いた話では、元女性校長は経営者ではなく広告塔でしかなかった。

 そのころ元社員に経営者から連絡が来て「社長を引き受けてほしい」と頼んできたという。もちろん彼女は断った。断った理由は「お金を集め出しているから危ない」だった。変なことになってその責任を押しつけられる予感があったようだ。

 10年前はまだまだ新聞に全面広告を出していた。疑いの目を向けていた人はごくわずかだった。私はこの話を聞いてすぐに毎日新聞時代の大先輩に伝えている。大先輩から警視庁担当に伝わったはずだが、問題を見抜けなかったのか真面目に取材しなかったのか、取材しても当時は問題なかったのか。大広告主だから手加減したか。

 引っかかるのはたいてい高齢者だ。それなりにお金を貯め込んでいるのに将来の不安を刺激されて、お金を出す。まるでパブロフの犬である。

 大がかりな詐欺事件の1つとして平成最後の歴史に残るだろう。被害と欲は裏表と学ぶ必要がありそうだ。