1972年に『新潮』3月号に掲載された車谷長吉さんのデビュー作である。当時車谷さんは27歳。運命の出会いというべきか編集者・前田速夫さんの目に留まって掲載された。

 亡くなった祖母への追悼の気持ちを書いたそうだが、登場人物の個性と隠し事が強烈な筆致で描かれている。不穏な空気が流れる。この不穏さはのちの作品群でますます大きくなってゆく。車谷さんの小説の通奏低音である。

 この小説は新潮新人賞候補作になったが、このあと3年近く没が続く。