<婆さまは鳥のような目をしている。暁夫はその話を、一緒に蛇をなぶり殺しにした遼一に話した>

 車谷さんの小説に登場する人物の目はたいてい不気味である。蛇もよく出てくる。

 最初から最後まですくいがない小説だ。「白桃」という題名にだまされてはいけない。「白桃」にも人間の悪意が描かれているからだ。

 1976年の『新潮』5月号に「魔道」と題して発表。車谷さん31歳。

 このあと転々と漂流しながら旅館の下足番や料理場の下働きをする。次の小説「萬藏の場合」を発表するまで5年余の歳月が流れる。