<暗がりから女が私に近づいて来て、「志山さんはね、あなたにも通夜に来て欲しかったんですよ。」と言うた>

<おびただしい数の墓石の列である。これほども多くの人が、かつてこの世に生きていたのだ>

<「誰の墓を捜しているのです。志山さんの墓ですか。私の墓ですか。」>

 1995(平成7)年の『新潮』9月号に発表した。葬儀だの墓だのを詰め込んだ短編である。どうしようもなく昏い。