私は阿波踊りが大好きだが、自己流である。いわゆる有名連の踊りと私の踊りと何か違うように感じるのだが、何が違うのか分からない。というわけで40年近く自己流で踊ってきた。

 そこに救世主が現れた。上京してきた小磯である。職場の上司か何かが娯茶平連の踊り手で、折に触れて教わったという。「わしに今すぐ教えてくれ」とすがりつき、東京・品川の雑居ビルの1階フロアで即席講習をしてもらった。

 手の動きと足の運びに基本型があると知った。およそ二拍子ごとに小さな小さな“決め”を一瞬するのである。この基本を知らないので私の踊りはダラダラしたものに見えてしまうようだ。

 音楽に合わせなければならないのだが、ノークラッチの車に初めて乗るのに似た難しさがある。足の運びを意識してしまうとうつむき気味になって手の動きがちぐはぐになってしまい、手の動きを意識すると足の運びがメロメロ。それでも必死こいて踊っていると、小磯が時折「うまい」と言う。実際は私の踊りが「うまい」わけはなく、私の手と足が阿波踊りの基本型にたまたま重なったのだろう。つまり、そういうことなのである。手の動きの基本型があり、足の運びの基本型があるのだ。

 腰を落とすとけっこう苦しい。足がもつれてよろける。ランニングとは使う筋肉が違うのであるから仕方がないというのは言い訳だが、姿勢は苦しい。しかし楽しそうな顔にしなければならないと小磯の厳しい指導が続く。自分が基本型で踊ってみて初めて難しさがよく分かる。

 今から思うと人通りのあるあんな場所でよくまぁ1時間も練習してしもた。阿波踊り愛である。毎日でも踊りたい。

 こうなったら(どうなった?)姿見を買わなければ。