灘高生との対話をまとめた本である。帯にこう謳う。<超難関校の少年たちへかつてなく深く、やわらかく伝えた人生のピンチからの脱出術>。

「難関」に「エリート」のルビが振られていて、私は首をかしげる。難関校がエリートなのかと疑問を抱かない編集者の凡庸に。ただペーパーテストができるだけの人間を何か全能のごとく「エリート」と喝采するのはもうやめよう。「まえがきにかえて」で五木さんが<エリート高の卒業生が、必ずしもエリートの道を歩むとは限らない。人生は不条理にみちている>と記しているとしても、だ。

 私が編集者なら灘高生ではなく荒れまくっている高校生に五木さんを立ち向かわせる企画を出す。教育から落ちこぼされた子供を五木さんの声がどこまで届くのか、どんな反応が返ってきて、五木さんがどう答えるか、そこを見たい。レールから外されてしまった子供はなかなか発言しないかもしれないが、いろいろな経験をしてきた五木さんならそのこころに分け入ることができるのではないか。ふてくされた顔で「あんた誰?」と突っかかる子供と対峙することで五木さんの中に今までと異なる何かが生まれるのではないか。

 二葉亭四迷の「ふさぎの虫」の話が私には興味深かった。私も1匹飼っているような気がする(嗤い)。