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 あの沢木耕太郎さんが11月24日付『日本経済新聞』に「午後の異邦人」と題するエッセイを書いていて、それをノンフィクション作家・中原一歩さんが目に涙を溜めて抗議している=12月2日付『毎日新聞』夕刊(東京本社版)文化面「このごろ通信」。

 何でも田園調布に向かうバスの外国人の多さを見て《非白人に対する警戒心と防衛本能のようなものが発動されているように感じられるのだ》とし、《バスに残っていた二人の日本人が途中の停留所で降り、運転手がバックミラーでちらりと車内を見る。すると、そこには外国人しか乗っていないことに気づき、愕然とする……》でエッセイを締めくくったそうな。

 中原さんは《最後の「愕然」という言葉に、沢木さん、それはないよと、憤慨してしまった》と記す。

「愕然」の意味は『広辞苑第7版』によると《ひどくおどろくさま》、『新明解第5版』によると《意外な知らせを受けて(事実を知って)ひどく驚く様子》だ。これだけを見ると、沢木さんの「愕然」に違和はない。

 しかし『深夜特急』という名著を記した沢木さんの表現だからこそ中原さんは驚いたのである。つまり、かつて異邦人だった沢木さんなら日本で見かける異邦人に対してただ驚くという反応以外の反応があってしかるべきではないか、ということだろう。日本に来た外国人に対する温かい目が全く感じられない、ということでもあるだろう。

 原文を読んでいないので(『日経』を探して読めよ)これ以上踏み込めないが、沢木さんが言葉足らずだったのか年老いたのか。いずれにしても、沢木さんの不十分な表現を取り上げた中原さんの感覚が素晴らしい。こういうコラムを書くことができる社員記者がなぜいないのだろうか。高給を食むと動きが鈍るのかもしれないな。

『毎日新聞』で沢木さんに取材を申し込むなどして追究すれば面白い記事になりそうだ。