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 年末の30日に「そうだ、四国八十八カ所参りがあった!」と思いついた。あのとき必死こいて一番札所に飛んで行っていたら1週間弱は歩くことができたはずで、今ごろ徳島のどこかをさまよい歩いていた。知識も準備も何もないからと一瞬ためらったのは不覚だった。かっこうの取材場所だったのに。しかも年末年始だからパソコンもスマホも置いて歩くことができたのに。寒い時期だが寝袋持参で適当に野宿すればなおさらいい取材ができたのに。

 とりあえず「るるぶ」の最新版『四国八十八カ所』を買って自宅で静かに目を通していたときに「そういえば」と気づいた。わが車谷長吉さんの『四国八十八ケ所感情巡礼』(文藝春秋)とお連れ合いの高橋順子さんの『お遍路』(書肆山田)をヤクオフか何かで買って持っているではないか。

 さっそく元日から読み始め、2日で読み終えた。車谷さんは徳島県がゴミだらけだと執拗に書く。うんこの話が続出する。アマゾンのレビューを見ると深い解釈ができない人が愚かな感想を書いていたけれど、生きるということは物やうんこを排泄することと表裏一体なのである。

 車谷さんは高橋順子さんをネタに悪口雑言を並べる。寺の名前を具体的に挙げて批判する。御利益を求めない人ほど手ごわい人はいない。車谷さんが吐く毒は人を的確に刺す。

 高橋順子さんの『お遍路』はさすがに品がある。しかし、点と点を車や観光バスで楽をして繋ぐお遍路さんに対しては車谷さんと同じように厳しい懐疑の目を向ける。もとより私は歩くつもりだったので何度も深くうなずいた。

 八十八カ所を歩く絶好の機会を逸したので、やむなく走り初め。