40代くらいの男が私の隣の席に『毎日新聞』を持って来てめくり始めた。私はたいてい1面から読む。この男は1面を飛ばしてどの面を読むのだろうかと盗み見したところ、その男が開いたのは何と書評面だ。

 次の面(見開きの書評面)をさっと見て、閉じて、新聞置き場に返した。

 東京・高田馬場駅前にある喫茶店カンタベリーで早朝に見たのがこれだった。70代くらいの父親らしい男と一緒で、父親は『産経』を見ている。男は『毎日』のあと『日経』を持って来た。

 いやしかし。いきなりステーキ……じゃない、いきなり書評面を開いたこの男は何者なのだろう。『毎日』の書評面がそれなりにいいと知っている上での行動に見えたから、出版関係者か? 

 そういえば30年近く前、JR東海道線で『サンデー毎日』を読む男性がボックス席で私の前にいた。当時『サンデー』編集部にいた私は、「次はワシが書いた記事や」と思ってワクワクして盗み見していたら、あっさり飛ばされ、その次のページにめくられた。

 良きにつけ悪しきにつけ読者の興味に抗うことはできないのである。今度また書評面を最初に見る男に会ったら声をかけてみよう。「もしもし、どうして書評面だけ見るんですか? あなたは何者ですか?」と。

 ワシが怪しまれる?