IMG_3356

 銃弾が貫通したニコンF。銃弾は前に小さな小さな穴を開けて入り、カメラを通り抜け、裏蓋を薔薇の花のように開かせて外に出た。

 話では聞いたことがあるし、何かで読んだこともあるようにも思う。しかし実際の銃弾の貫通を自分の目で見るのは初めてだ。これが人間の体だったら、と想像するのは自然の流れだろう。そもそも人間が被弾した病院に送られるか埋葬されるかするから、被弾した人間を見るのは普通難しい。被弾したカメラを見る機会も一般的にはめったにない。だからだろうか、銃弾の威力に私は見入っていた。

 一ノ瀬泰造さんは26歳の若さで消息を絶った。戦場に魅入られたカメラマンの多くが死に神に捕らえられ、彼も例外ではなかった。

 大きな受賞歴はないけれど、それはカメラマンにはどうでもいいことなのかもしれない。いい写真を残している。優しい男だったに違いない。

 その時代に同じ世代だったとしても、ベトナムやカンボジアにフリーカメラマンで入る勇気は私にはない。一ノ瀬泰造は入った。すごいではないか。