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 根本先生をひとことで言うと、古今東西の小説の世界地図が頭に入っている編集者、ということになるだろうか。その世界地図に当てはめるから、出てきた小説が斬新なのか二番煎じ三番煎じなのかすぐに区別がつく。編集者でも小説家でも対等にできる人はいないのではないか。

 原稿用紙500枚分を1時間だか2時間だかで読むことができると言っていた。この特異な才能が編集者として大きな“武器”になったのは間違いない。

 半可通をかなり嫌う。よく知りもしないことを知った風に言うなと叱責する姿を何度か見たことがある。恥を知れということなのかもしれない。半可通の世界に片足を置く私など犯罪者並みである。恥知らずなのだろう。いやそもそも恥知らずでなければ表現できるわけがないではないか。などと開き直ったらおしまいだな。

 さて、そんな根本先生が2月21日付『毎日新聞』夕刊(東京本社版)2面に登場した。根本先生の言葉(考え、思い、感じ、などが昇華した模糊としたもの)の海から何らかの塊を引き出そうとインタビューしたのは藤原さんだ。開高健ノンフィクション賞受賞の記者で、言葉や表現に対して人一倍腐心してきた。そういう藤原さんが周到な準備をして、根本先生に何を投げかけて、どんなことを引っ張り出して、そこからどれをすくい上げて、どんな反応を示しながら記事にするか。読みどころがここにある。

 仲間に配るため、毎日新聞社5階の販売局に行ってとりあえず10部買った。1部たったの50円。10部買っても500円。何と安いのだろう。