1人に惚れ込むとのめり込むタチなので、縦に掘ってしまう。このため名前は知っているのにその小説家の作品を読んだことがない場合が多い。そんな私に有無を言わさず突きつけてくれるので大変ありがたい。

 私がここで感想を書くなどおこがましいのだが、眤七阿気鵑呂垢瓦そ颪手だ。読むのは初めてなのだが、警察小説の書き手という印象があった。こんな小説を書いていたとはすごい才能だとしか言いようがない。特殊で際立つ舞台を選び、そこで繰り広げられる労働を蕩々と叙述した。小学4年ごろの音楽で習った「鰊(にしん)来たかとカモメに問えば」という民謡が重なる。鰊漁の壮大さが手に取るように見えた。

 収録された作品は以下のとおり。どれも泣きたくなるくらいの小説だった。生きているうちに読むことができて本当によかった。

久生十蘭「無月物語」
神西清「雪の宿り」
芥川龍之介「お富の貞操」
泉鏡花「陽炎座」
永井荷風「松葉巴」
宮本百合子「風に乗って来るコロポックル」
金子光晴「どくろ杯(抄)」
佐藤春夫「女誡扇綺譚」
横光利一「機械」
眤七亜崟音匸隹痢幣供法
堀田善衞「若き日の詩人たちの肖像(抄)」
岡本かの子「鮨」