集英社創業90周年記念企画であるこの全20巻の全集はひたすら面白さに軸を置く。編集委員が逢坂剛、大沢在昌、北方謙三、船戸与一、夢枕獏なのだから当然と言えば当然なのだが。

 石原慎太郎の小説は大学時代にほぼ読んだが肉体派としての石原文学を久しぶりに味わうことができたし、理系の素養をフルに突っ込んだ小松左京の小説はSFの域を超えているし、いやもう大変。

 田中光二の小説を読むのはこれが初めてだ。ウイルスを“小道具”にしてハラハラドキドキの活劇は、新型コロナ騒動の今あまりにもぴったりの内容なのでその偶然に感謝した。ただただ面白い小説ってのはいいなぁ。

 新田次郎の小説は大学時代にほぼ読んだはずだが、『八甲田山死の彷徨』はラッキーなことに未読だった。この作品は経営者こそ読むべきだろう。山田少佐のような経営者に読ませたい(笑い)。

 収録作品は以下のとおり。

【長編】
田中光二「大いなる逃亡」
新田次郎「八甲田山死の彷徨」
【短編】
村山槐多「悪魔の舌」
手塚治虫「妖蕈譚(ようじんたん)」
武田泰淳「流人島にて」
石原慎太郎「処刑の部屋」
白石一郎「元禄武士道」
小松左京「ゴルディアスの結び目」
【掌編】
氷川瓏「乳母車」
五木寛之「無理心中恨返本」
星新一「ねらわれた星」
平井和正「世界の滅びる夜」