三島由紀夫の有名な作品はほとんど読んでいない。数冊読んだだけでしかないのだが、煌(きら)びやかというのか端正というのか雅というのか、上流階級(私は見たことがないけれど)を書かせたら天下一品だと思った。そんな三島の論考『小説とは何か』は小説作法についての三島の考えが開陳されている。

 核心は『遠野物語』の炭取りがくるくる回るという記述への快哉であり、それを引いて車谷長吉さんは「虚点」の重要性を『読むことと書くこと―文学の基本―』(朝日文庫『銭金について』収録)に書いた。

 このブログのどこかで私は石原慎太郎『太陽の季節』の障子破りなどを「虚点」として挙げたが、ほかにもあるある。例えば中島敦の『山月記』はまさしくそうだし、村上春樹の『1Q84』で太陽が2つあるというのも「虚点」だろう。

 本書収録の『わが創作方法』も興味深いのだが、どれだけ具体的に記されても誰も真似などできようはずがない。だからこそ三島由紀夫なのだなぁ。