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 おぼろげな記憶なのだが、私が那覇高等予備校で講師をしていたころだから1987年2月から89年3月までだが、講師室で先生たちから祝いの言葉を受けている小柄な女性がいた。何かの文学賞をもらったのだと聞いたような気がする。当時私はその方面に全く興味がなく、立ち入らず、お祝いの言葉さえかけなかった。

 その光景を時々思い出してきたのだが、あの女性講師の肝心の名前が出て来ない。私は人の顔と名前を覚えるのが苦手なので、この女性に限ったことではないのだが。

 それが6月20日付『朝日新聞』読書面を見て「あ、この人だ」。崎山多美さんである。

 今も小説を書いているのだった。検索してみると、パソコンに崎山さんの顔写真が出てきて、私の記憶とほぼ重なる。

 ウィキペディアによると、《1979年「街の日に」で新沖縄文学賞佳作、1988年「水上往還」で九州芸術祭文学賞受賞、1989年「水上往還」で第101回芥川賞候補、1990年「シマ籠る」で第104回同候補。2017年、『うんじゅが、ナサキ』で第4回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞》ということだから、私が予備校で見たのは88年の九州芸術祭文学賞を受賞したときだったのだろう。

 その後芥川賞の候補に2回という実力ある書き手なのだった。すごいじゃいないですか崎山さん! 
 それが今回の芥川賞は本土の小説家が沖縄を舞台に書いた『首里の馬』。前回だか前々回だかの直木賞の『宝島』も沖縄が舞台で、本土の小説家が書いていた。

 受賞したから偉いとか受賞しないから偉くないとかそういうことでは全くなく、沖縄でずっと書いている崎山さんの小説が受賞を機に内外で広く読まれることになればいいなぁと元同僚は思うわけである。

 そうかー。崎山さん頑張って書いているんだなぁ。そのことに私はこころ動かされた。