東京都内の容疑者の自宅に京都府警が乗り込んで連行する映像をNHKが撮っていたのだからすごい。

 さて。問題はここから。

 逮捕された医者の1人は元厚生労働省の技官。恐らくこの男だろう、『京都新聞』サイトによると《「高齢者は見るからにゾンビ」などとネットに仮名で投稿し、高齢者への医療は社会資源の無駄、寝たきり高齢者はどこかに棄てるべきと優生思想的な主張を繰り返し、安楽死法制化にたびたび言及していた》。

 神奈川県相模原市の知的障害者福祉施設やまゆり園で入所者19人が殺害され、入所者と職員26人が重軽傷を負った凄惨な事件とつながる。

 高齢者がゾンビなら、私の両親はまさしくゾンビであり、70代は死に損ない、60代はゴミ、50代後半の私はカスということにでもなるか。という具合にどんどん広がると「20代以上は死ね」という風潮になってもおかしくない。

 高齢者や障害者らを大事にできない社会が致命的なのは、その考えが拡大するとほかの人間も大事にしない社会をつくってしまう危険性があるからだ。成功だの成長だの効率だの右肩上がりだのを後生大事にしてしまう社会はそれに従えない人間を切り捨てることにつながりうる危うさを内包する。自分は切り捨てられる側ではないと思い込んでいるらしい人が無神経な発言をフェイスブックに時々載せていて、予備軍の広さを感じる。

 ネット上では早くも今回の犯罪者を尊敬するという投稿が出回っている。こんな社会を私は認めない。

「大金を預けてあるスイスの銀行から連絡は来たか?」と期待させるようなことを言ってボケたあと何年も寝たきりになって意識のないまま亡くなったひい婆さんなど犯罪者にとっては「ゾンビ」そのものだろう。こんなひい婆さんなど捨てろと犯罪者は言うのである。

 やまゆり園事件の犯人はやまゆり園で勤めていたときに同僚たちとの話から入所者は世の中に不要だという考えを芽生えさせた。ということは、もしかしてこの容疑者が勤めた厚生労働省も省内でそういう見方をしていた官僚がほかにもいたのではないか。

 人間社会の根幹に関わる重大な問題なのだが、官僚や報道機関や学者らが選良意識を持っているとしたら、今回の問題を真正面から捉えることができないだろうし、ひとごとで終わってしまう。

 ALSが問題なのではない。安楽死が問題なのでもない。役に立たない人間は捨てればいいというおぞましい優生思想を持つ人間がなぜ生まれたのか、なのである。

 強制収容所行きの列車を走らせてなるものか。