出版界では今も触れてはならないとされる山村美紗と男たちについて、小説家の激しい魂で突破した本である。大手出版社から出せるはずがなく、西日本出版社が出版社魂を発揮した。

《これを書かないと、私は悔やむ。それは間違いなかったし、前に進めない》

《仕事を失う恐怖よりも、書かずに死ぬ恐怖が先に来て、筆を進めた》

 このような執念を持った書き手ほど手に負えないものはなく、しかしそれが素晴らしい作品を生む。読者冥利に尽きる。

 山村美紗さんは200冊以上の小説を残し、その多くがテレビドラマになった。にもかかわらずというべきか、文学賞には無縁だった。《美紗について調べて、何よりも印象に残ったのは、彼女の「自信の無さ」だった。あんな有名な作家が、自分と同じ苦しみを抱えていたのかと思うと、胸が痛んだ》というところに観音さんの猛烈な執筆動機が記されている。

 山村美紗さんの元配偶者らにも取材している。日垣親分の企画で西村京太郎さんにお目にかかって一緒に写真に収まったことがあるせいかなおさら興味深かった。巻末の参考文献一覧を見ても本書は小説ではなくノンフィクションである。

 本書を書いた観音さんと本にした西日本出版社を応援するために1冊買おうではないか。