晩年の石牟礼道子さんを取材で追いかけ臨終に立ち会うこともできた米本浩二さんによる3冊目の石牟礼さんものは、石牟礼さんと渡辺京二さんとの関係を追いかけた。ある種タブーとも言うべき関係を二人の日記などから文字を拾い、積み上げ、攻めてゆく。

 キーワードは渡辺京二さんの「カワイソウニ」だろう。この意味を米本さんに問われた瀬戸内寂聴さんは瞬時に「男が女にほれた表現です」と断じた、というところが私には圧巻であった。似たようなことを言う友人がいたし、私にもかすかな覚えがあるからだ。そうか、あの女に惚れていたということか、とか。

 私ほどのタイカともなればふたりがどういうカンケイであっても微動だにしないし、そういう下世話なことに対する興味がほとんどない。そこではなく、魂が抜き差しならないくらい織り込まれてゆく人に出逢えていいなぁという憧れに行き着く。などと思うのは棺桶が見えてきたせいかもしれない。