
NHKスペシャル『世界は私たちを忘れた』を見てよかった。単なる外野が解説めいたことを言うのはよくないのだが、象徴的な女の子と出会えたのが大きい。彼女は売春を強いられ、兄は臓器を奪われてゴミ置き場に捨てられていた。いやもうたまらない。
私はてっきりNHKの記者かディレクターが制作した番組だと思っていた。ディレクターの名前金本麻理子さんを検索すると金本さんが代表取締役を務める番組制作会社のサイトが出てくる。昨年度は日本記者クラブ賞を受賞しているではないか。社会派の作品を出し続けている。すごいなこの人は。
取材対象となった女の子と家族は貧困に苦しむ。彼女の一家だけ手を差し伸べてもシリア難民問題は1ミリも動かないのだが、金本さんなら黙って見ているだけではないのではないかと期待したい。どのようにつながり続けているのか、あるいはいないのか、というところに今の私は興味を抱く。
なおNHKのサイトではこの番組をこう紹介している。《レバノンに避難した120万から150万のシリア難民がコロナ禍で窮地に追い込まれている。売春や臓器売買が広がっていたが、3月15日の非常事態宣言後、差別が拡大。難民キャンプへの襲撃事件が起こり、自殺者も現れた。深刻なのが女性と子供たちへの抑圧だ。家庭内暴力、児童労働が増えている。8月、ベイルートの爆発事件後、拡大する感染に国際機関は支援を訴えている。8か月間、シリア難民たちの姿を追ったこん身のルポ》