柳美里さんの『JR上野駅公園口』が全米図書賞を受賞したという報道で初めてこの小説を知った。高度経済成長を支えた福島県出身者を主人公にしたとなれば読まない理由がない。

 この小説の魅力は救いのなさにある。徹底して救いがない。人生の辛酸を嘗めてきたであろう柳美里さんが安易な物語をつくるわけがないのである。ハッピーエンドのない人生を覚悟している読者には響く響く。

 さて。この小説を英訳したモーガン・ジャイルズさんの功績を無視するわけにはいかない。浜通りの方言をどう英訳したのだろう。浄土真宗のあれこれ、例えば南無阿弥陀仏をどう英訳したのだろう。翻訳者の腕がよほど優れていたのは間違いない。英訳本を取り寄せて読み比べる時間はないのでそこはさっと通り過ぎるけれど、モーガンさんの翻訳がなければ全米図書賞の受賞はなかった可能性が高い。翻訳者は小説家と同じかそれ以上に重要である。

 やりきれなさの大地と自分の魂が地続きであることを感じる読み手は世界中にいるはずで、柳美里さんの小説が広く注目を集める1冊になったことは間違いない。