中国の小説家残雪さんの『暗夜』は暗喩的な話で少々難儀した。

 一方ベトナムの小説家バオ・ニンさんの『戦争の悲しみ』には最初から最後まで圧倒された。ベトナム戦争を戦ったベトナム人兵士の戦場と、結ばれることのない悲しい恋愛は、著者の経験を下敷きにしているはずで、その重さといったらもう。

 訳者に井川一久さんの名前が出ていてびっくり。もちろんまったく面識はないが、かつて朝日新聞記者として活躍した人である。私の大学時代に井川さんの本を読んだ記憶があるので懐かしい。

 戦争を主題にした小説やノンフィクションは多いけれど、非情な戦場の経験者が書く作品は舞台も登場人物の経験も行動も感じ方も考え方も段違いに深く昏い。想像を絶する世界にぐったりした。