人は食べ物があれば生きていくことができる。お金ではなく食べ物。戦時中や戦後がそうだった(らしい)。農家に行って自分の着物などと米を交感してもらったというような話を何度か見聞きしてきた。

 大震災や感染症の時代も同じではないか。生きていくことができるのは食べ物を自分の手で掴む人だ。つまり第1次産業である。

 ということで農業に関心を持った。しかし田植えをしたことなどないし、畑で作物を栽培したこともない。手始めに市民農園を借りようと思い立ったのに空きがない。いきない挫ける。

 次は漁業である。私は魚が大好きだ。よし魚だ! しかし、である。本当にいい魚を釣ろうと思えば船に乗らなければならない。ところが私は船に酔う。1988年ごろの沖縄本島南部でサンゴ礁を見るガラスボートに乗ったまではよかった。サンゴ礁をわれわれ客に見せるために船がエンジンを止めた途端「うぷ」。あれ以来船には近づかないようにしている。子供のころ徳島市の海岸で釣りをした経験は何の役にも立たない。

 海の大魔神のような五島さんが瀬戸内海で船酔いしたとフェイスブックに最近書いていて、魚を釣って食っていくのも私には無理だとよく分かった。

 第3次産業は森林が舞台だ。キノコ数種類をはほぼ毎晩食べているけれど、キノコだけではおなかを満たすことなどできないだろう。

 さて。私には何ができるのか。農家もできない。船に乗って魚を釣るのも無理だ。山に入るのも。

 以前から薄々感じていたが、私は何もできない人間なのだった。最初に死ぬタイプだな。