確か『毎日新聞』の書評面で取り上げられていた本である。アマゾンで買って長い間積ん読にしていた本書をようやく読んだ。ピュリツァー賞文学部門を受賞したり、『ニューヨーカー』に掲載されたりして、注目を集めているインド系作家の小説だ。

 9編の中で私が最も共感した作品は本の題にもなっている『停電の夜』である。引き戻せないところまでの亀裂が走った若い夫婦の物語は読ませる。物静かで繊細な記述に引き込まれた。全体に移民系文学とでも言えばいいのか、そういう点で米国人に新鮮な視点を提供したのではないか。評判の『三度目で最後の大陸』は米国人が好みそうな物語だと私は思った。

 私の小説吟味力ではこれ以上は何も書けない。私の限界である。