吉田健一さんの翻訳である。原文を非常に丁寧に日本語に置き換えていると思われ、まどろっこしい部分がないわけではないが、誤読をしたくても絶対にできない。主語述語修飾語をかっちりと、置くべき位置に置いているからだろう。

 英国が植民地を持っていた時代の“支配層”の考え方や行動が描かれている。彼らが浮世離れしているのは、高等遊民が出てくる夏目漱石の小説と同じか。

 そんな中で経済苦に喘ぐレオナードが小説の定石通りに出てきて光る。光るのだが、解説にあるように、もし著者のフォースターに遺産がなく、もっと生活の苦労をしていれば、深い洞察を持ってレオナードを描いただろう。

 この小説は吉田健一さんの格調高い和訳を楽しむ本なのかもしれない。