《精神的にも肉体的にも合致した夫婦と云ふものの有り難味が、四十六歳の今日になつて漸く僕に分つた》と記した谷崎純一郎。この谷崎文学の第一人者による解説である。

 私は丁未子さんをきれいな女性だと思うのだが、谷崎にとってそこは重要ではなかった。《屋外での即興的なセックスに応じてくれず、室内でも白昼は嫌がるなど、谷崎の性的嗜好とは大きく隔たった丁未子に対して苛立ち、困惑を隠しきれずにいる》そうで、ということは谷崎が崇め奉った松子さんはそういう嗜好だったのか、ということになるのだが、それはさておき、いろいろな衝動が芸術として開花するのだなぁ。

 事実、谷崎のこうした嗜好があの佐助をナオミを生んだのである。