肝臓がんでステージ4と診断された院長がいた。余命宣告を受けたはずだが、それはスタッフには知らされなかった。酸素を吸いながらも患者を診て、ある日亡くなった。

 院長も家族も死ぬとは思っていなかったので「突然の死」だったが、痩せていく様子などを見てきた看護師らは冷静に「お盆までだろう」と判断していたし、食べることができなくなったと聞いてからは「あと数日」とこれまた冷静に見ていた。

 問題は院長が自分を死ぬと思っていなかったことにある。特殊な病気を診る医院なので、本来なら院長が紹介状を書いて引き継ぎをするべきなのに、何もかもほったらかして逝ったものだから患者は「私はどこの病院に行けばいいのですか」と困り果て、スタッフはその対応でてんてこ舞い。

「余命3カ月と宣告されていたはずで、3カ月もあれば患者さんに紹介状を書いてバトンタッチできたのに、自分の都合で患者さんを抱え続けた結果がこれ。医者として失格」
 看護師らスタッフは厳しく顧みる。

 がんは死ぬ準備期間を与えてくれる。その準備期間を生かして“事業承継”するのは当たり前なのに、生への執着があると判断を間違う。結局自分のことしか考えていなかったことになる。

 後継者を決めていないし、相続でもめそうなので、関西地方にあるこの医院、最悪閉院だろう。