新潮新人賞受賞作への選評で<自分としては全く全く評価出来ないものの、あえて強く反対もしなかった。幸運な新人だ。長持ちするといいが>と憎まれ口を叩いたのが田中慎弥さんである。田中さんといえば、芥川賞受賞会見で「もらっといてやる」とこれまた憎まれ口を叩いていた。どうにもこうにも本音を抑えられないらしい(笑い)。そこが魅力の1つである。

 そういえばまだ読んでいなかった。さっそく買い求めて読んだのが芥川賞受賞作『共喰い』(集英社文庫)である。私が買ったやつは2013年の1刷に始まり2020年に8刷を迎えていた。継続して売れている。

 中上健次を彷彿させるが、中上健次の荒々しさを抑えた感じ、というのが第一印象だった。巻末には瀬戸内寂聴さんとの対談が載っていて、さすがに憎まれ口は影を潜めているのだが、これがめっぽう面白く、得るものがたくさんあった。