ソフトバンク系の出版社がこういう本を出しているところがまず面白い。いい編集者がいるのだろう。

『毎日新聞』の広告を見たその日に本屋で見つけて買ったのは、亡くなる3カ月前の語り下ろしだからである。つまり寂聴さんの集大成なのである。好機にインタビューしたものだ。

 愛、仏教、四苦八苦、(女性の)生き方、忘己利他、あの世……。99年生きた寂聴さんの智慧がこの1冊に凝縮されているので、これから生き、暮らし、死ぬときの手がかりになる。見方を変えれば寂聴さんの入門書でもある。

 柔和な顔の寂聴さんの、それこそ亡くなる3カ月前の写真が表紙などに使われているが、過去の写真や映像を見ると、今のような柔和な笑顔はあまりない。むしろ非常に厳しい、苛烈な顔をしている。いい老い方をしてきたということか。とはいえ、寂聴さんのこの笑顔の下に潜む核心を見る必要がある。

 寂聴さん笑顔の下のマグマかな(鶴岡 ゆう坊)=12月15日付『毎日新聞』朝刊「仲畑流万能川柳」から。寂聴さんの核心をこれほど突いたものはないだろう。