実在した画商・林忠正とゴッホ兄弟にまつわる小説である。架空の人物を登場させて舞台まわしをさせた。

 原田マハさんがこの作品で取り組んだのは、芸術とは何かという大きな課題だろう。したがって、写真でも工芸でも陶芸でも小説でも、およそ芸術と言われる分野に属する人に共通する鬼魂が描かれている。「あっ!」と頭が痺れるような記述が数カ所あり、線を引いてページを折った。今そこを読み返しても「あっ!」と唸ってしまう。

 曖昧模糊としていたところに答えが落雷してきた

 この小説は友人に教えてもらった。絵の分野など、従来の私なら絶対に近寄らない。絵に興味がないんだから。それが友人のおかげで半ば強制的に近寄ってみると「あっ!」の世界で、別に私は芸術家ではないが得るものが多かった。世の中には面白い小説がまだまだある。死ぬまでにあと何冊読むことができるだろうか。