上野千鶴子さんの『おひとりさまの老後』(文春文庫)を読んでいるあいだに知り合いの70代男性が亡くなった。両方を照らし合わせると『おひとりさまの老後』は理想的過ぎる死に方だと言わざるを得ないというか、そんなにいい流れで死ぬことができるのかなと疑問を抱く。

 70代男性はがん治療を受けていた途中で全く別の部位の末期がんが判明した。人工肛門を着け、自宅に戻った。本人は人工肛門を自分で取り替える体力がもはやなく、便がベッド上にどっぺりと流出したときは大騒ぎになったほか、末期がんの痛みで苦しみ続けた。家族は夜中も起こされ、ずっと当たり散らされ、わがままに右往左往し、持て余して音を上げ、一刻も早く男性を病院に追いやることで一致した。救急車で運ばれる男性を見送りながら家族はほっとした。

『おひとりさまの老後』で描かれている今際は、激しい体力消耗や痛み、人工肛門など柊末期に襲ってくる事態を全く前提としていない点で理想に過ぎる。私が間接的に見てきた70代男性の死から言うことができるのは、「在宅ひとり死」は口で言うほど容易な道ではないということだ。