漫画家とりいかずよしさんが75歳で亡くなった。とりいかずよしさんと言えば漫画『トイレット博士』である。メタクソ団という子供のグループが登場し、合言葉は「マタンキ!」だった。小学4年当時の私や同級生は学校で年中「マタンキ!」と声をかけ合っていた。精神年齢は幼児並みなのでウンコやおしっこの話に「げへへへ」と大笑いする豊かな時代だった。

 作中人物にコヤヤシ少年というのがいたはずで、ウンコ絡みの「肥やし」と明智探偵の小林少年をかけていたのだろう。今の私の人格ケーセーに深く寄与した懐かしい漫画である。

 その作者が亡くなったのである。新聞各紙はどう報じたか。残念なのは『毎日』と『サンケイ』だった。何の味わいも、追悼の意もない、砂漠のような訃報記事にガッカリした。

『朝日』はこう書いた。

《ギャグ漫画「トイレット博士」を1969年から週刊少年ジャンプに連載。大ヒットし作中の合言葉「マタンキ」が子どもたちの間ではやった。ほかに「くたばれ!とうちゃん」など。愛知淑徳大創造表現学部教授も務めた》

 マタンキ少年だった私は納得である。ところが上には上があった。それが『読売』だ。

《作中の「メタクソ団」の合言葉「マタンキ!」が子供の間で流行し、連載は約7年続いた》

 おお。「メタクソ団」にまで言及しているではないか。素晴らしい。

 書いた記者かデスクも少年時代に友達と「メタクソ団」を結成して「マタンキ!」と叫んでいたことが想像される。愛情を込めて訃報記事を書くならこうあるべきではないか。『読売』最高!